電子的支払手段等に関する資金決済法改正

弁護士(東京) 坂 勇一郎

 金融庁は、2022年1月11日、「金融審議会 資金決済ワーキング・グループ報告」(以下、「報告書」という)を公表した。報告書第2章は、「金融サービスのデジタル化への対応」として、資金決済制度に関し、電子的支払手段及び前払式支払手段等について、新たな規律を提言した(同報告書に基づき、2022年3月4日通常国会に資金決済法等改正法案が提出された)。

1 ステーブルコインに関する規律の方向性

 ステーブルコインとは、法定通貨の価値と連動する価格で発行・移転される(ことを企図した)電子的価値であり、ビットコイン等の暗号資産に用いられる分散台帳技術(またはこれと類似の技術)を用いるものである。米国等において、テザーやUSDコイン等の取引が急速に拡大している。

 既発行のステーブルコインについては、発行の裏付けとなる資産が十分に保全されていない事例や、法定通貨の価値と連動する価格が維持できずに暴落した事例が報告されており、また、マネー・ローンダリング等や詐欺事案に用いられるリスクが高い。米国では、2021年11月に大統領金融市場作業部会が決済用ステーブルコインの発行者を預金取扱金融・・・

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