生来的に電磁的記録である証拠の民事訴訟上の取扱い

京都大学教授 笠井正俊

1 本稿の対象

 本稿で扱う生来的な電磁的記録とは、電子的方式等の人の知覚では認識できない方式で作られてコンピュータで用いられる記録である。「生まれながらの電子データ」などとも呼ばれる。民事訴訟法(以下、同法の規定は条文番号のみで示す)上の正確な定義については3条の7第3項を参照されたい(民法151条4項、刑法7条の2等も同じ)。コンピュータ・ソフトウェアで電子的に作成されてハードディスク、フラッシュメモリ等の記録媒体に保存された電子データ(電子契約書、電子カルテ、電子メール等様々なものが想定される)がその例であり、これらが民事訴訟で証拠としてどのような取扱いを受けるかがここでのテーマである。

2 改正法案の内容

 民事訴訟手続のIT化を図ることなどを目的として今国会(令和4年の通常国会)に提出されている民事訴訟法の改正法案では、生来的な電磁的記録について、書証に準ずる証拠調べをするための規定を置くこととされている(231条の2・231条の3)。これは、民事訴訟において、生来的な電磁的記録が、記録された情報の内容(作成者とされている者の意思、認識等)を証拠資料とするために証・・・

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