送達手続のIT化の意義と問題点

弁護士(東京) 大高友一

1 現行民事訴訟法における送達手続の概要と意義

 民事訴訟手続における送達とは、当事者その他の訴訟関係人に対して、訴訟上の書類の内容を了知させるために、法定の方式にしたがって書類を交付し、または交付を受ける機会を与える裁判所の訴訟行為のことをいいます(伊藤眞「民事訴訟法」)。

 民事訴訟を公正かつ適正に行うためには、訴訟当事者に対して、裁判所や相手方当事者の訴訟上の書類の内容を了知させるか、少なくとも了知する機会は与えた上で手続を進める必要があります。また、手続の適法性に関する争いを防ぐため、当事者が了知したか、了知する機会が与えられたことを公証できるようにすることも必要です。このような観点から、現行の民事訴訟法は、訴状・控訴状・判決書・決定書など、訴訟上重要な書面につき、当事者に対する法定の送達手続を行うことを求めています。

 この法定の送達手続の具体的方法については、名宛人に対して現実に送達書類の謄本を交付する交付送達(法101)の方法が現行法における原則とされており、それが叶わない場合に限り、書留郵便等によって送達書類を発送して発送時に送達の効力を生じさせる付郵便送達・・・

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