木津信抵当証券事件

弁護士(大阪) 松田繁三

1 大深先生が、令和3年8月26日に急逝されたとの連絡を受けました。衝撃であり、特に木津信抵当証券の弁護団での先生との熱いお付き合いが思い起こされます。

2 私が大深先生とご一緒に仕事をするようになったのが、平成7年夏、大深先生を団長として結成された木津信抵当証券被害者弁護団でした。

 阪神大震災が起きた平成7年の8月30日に大阪の木津信用組合(以下「木津信」という)に突如業務停止命令が出されました。銀行は倒産しないという神話が存在した中で、規模が相当大きな金融機関が経営破綻したのは、戦後初めてのことでした。

 ただ、預金なら、預金保険により1000万円までの元本とその利息は全額保護されます。しかし、木津信は、定期預金と同じようなものだが利率が高くて有利な商品だと勧誘して、顧客に定期預金を解約させて、子会社の木津信抵当証券㈱が発行する「抵当証券」に買い替えさせていました。だが、問題なのは、抵当証券には預金保険の適用はなく、上記の保護はされないので、債務者が倒産したり担保不動産が下落すると、大きな損失を被ることになるのです。

 被害者の多くは高齢者で、大阪だけでも3273名にも及び・・・

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