宗教に絡む悪質な勧誘行為と法的責任

早稲田大学法学学術院教授 棚村政行

1 はじめに

 「あなたの不幸は、先祖の祟りが原因だ」「悪霊がとりついている」などと、人の不安や悩みなどに付け込んだ強引な物品販売や高額な祈祷料・献金など支払わせる「霊感商法」「霊視商法」などの被害は、今なお後を絶たない。また、最近は、通販雑誌や占い雑誌の広告をみて、連絡をしてきた人に開運ブレスレットを買わせて、購入者に「悪い霊がいる」「先祖の邪念が強い」などと、さらに高額な祈祷料・供養料等を支払わせる「開運商法」などの被害も目立つ。そこで、本稿では、まず、はじめに、このような霊感商法・霊視商法・開運商法に対する法的救済手段や契約アプローチと不法行為アプローチについて簡単に触れる。次いで最近の宗教に絡む悪質な勧誘行為や開運商法などをめぐる民事責任が問われた事件を紹介しながら、宗教に絡む悪質商法や不相当な勧誘行為の法的責任につき検討した上で、最後に若干の展望を試みる。

2 霊感商法等への救済手段─契約アプローチと不法行為アプローチ

 人の不安や悩みに付け込んで高額な物品を売りつけたり、祈祷料等をとる霊感商法などに関しては、2018年に改正された消費者契約法4条3項・・・

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