セルビアにおける消費者保護
─新消費者保護法でDo-Not-Call制度を導入─

弁護士(大阪) 薬袋真司
京都大学大学院法学研究科准教授 カライスコス アントニオス

1 はじめに

 セルビア共和国(以下、「セルビア」という)の国会(国民会議、一院制)が、2021年9月10日に、新たな「消費者保護法」を可決した。この法律は、2014年消費者保護法に代わるもので、新たに電話勧誘拒否登録制度を導入する。

 セルビアは、東欧バルカン半島に位置する西バルカン諸国の一つである。人口は約700万人(日本の1/18)、面積7万7000㎢(日本の1/5)である1

 セルビアは、旧ユーゴスラビア連邦を構成していた六つの共和国の一つであるが、冷戦終結に伴って生じたユーゴスラビア紛争等を経て、現在は、連邦を構成していた各国はすべて独立するに至っている2。これらのうち、既に2か国がEUに加盟しており、現在、セルビアを含む3か国が「加盟候補国」となっている3

2 憲法における消費者保護の位置づけ

 セルビアにおける消費者保護の特徴の一つは、消費者の保護について憲法上明文の規定がある点である。

 セルビアと連合関係にあったモンテネグロが2006年に独立したことを契機に、セルビアも独立国家となり、2006年に新たな憲・・・

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