残土崩壊が示すもの

京都大学防災研究所教授 釜井俊孝

はじめに

 2021年は、残土(建設発生土)盛土の問題が注目された年であった。6月には、千葉県多古町、8月には京都市大岩山と大津市で残土斜面が次々と崩壊した。特に、7月3日、豪雨の中で発生した熱海伊豆山の土石流は、死者行方不明者27名という深刻な被害を引き起こし、わが国の都市が直面する残土問題の深刻さを浮き彫りにした。ここでは、それらを崩壊のメカニズムと社会的視点の二つの側面から議論する。

地下水

 残土による盛土の崩壊(残土崩壊)は、2021年以前にも、2013年大津市和邇、2014年豊能町、横浜市緑区、2017年岸和田市大沢、2018年京都市大岩山で頻発している。それらに共通するのは、盛土に溜まった地下水の排除が不十分であった点である。「力学的な土」とは、土粒子と空隙の集合体であり、土の強さは、土粒子の接触摩擦力に依存する。空隙は空気と水(地下水)で満たされており、空隙内の圧力が高まると、土粒子同士が引き離され、摩擦が減少するので、土の構造が崩壊するのである。したがって、災害を防ぐためには、盛土に入り込んだ地下水を排除する仕組み(暗渠等)が必要である。しかし、・・・

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