長崎郵便局長による詐欺事件の考察

弁護士(長崎) 今井一成

1 事件の概要と経過

 2021年4月、長崎県にて、元郵便局長が高金利を謳い文句に架空の定期郵便貯金の勧誘をし、1996年11月から2021年1月までの間、現金を詐取していた事件が報道された。日本郵便株式会社の発表によれば、元郵便局長は合計62名から12億円以上を詐取していた(長崎県・長崎住吉郵便局元局長による現金詐取事案について(調査結果)参照)。

 私は、同年2月の時点で、日弁連消費者問題対策委員会の関係でこの事件をある程度把握していた。また、私は、ほぼ同じ時期に、別の経緯で、警察より自分の親族が元郵便局長による詐欺事件の被害者である旨を知らされた相談者から法律相談を受けていた。法律相談時のメモを見返すと、当時、相談者は被害に遭った親族とともに、日本郵便コンプライアンス室職員による聴取り調査に応じており、今後の対応について相談したいという内容であった。なお、事前に日弁連消費者問題対策委員会経由で把握していた情報では、郵政大臣の捺印がある書面が被害者には交付されていたとのことであったが、この相談者も同様の定期郵便貯金証書を持参しており、事前の情報のとおりであった。そし・・・

この記事は会員に限定されています。ログインしてください。
会員になるには「会員に申し込む」をクリックしてください。