5月13日大阪高裁 原爆症と認定

ノーモアヒバクシャ近畿訴訟弁護団 弁護士(大阪) 豊島達哉

 2021年5月13日。大阪高裁12民事部は地裁で敗訴した被爆者Tさんについて一審判決を取り消し、Tさんが原爆症であることを認める旨の判決を言い渡しました。

 Tさんは、4歳時に原爆が落とされた3日後の長崎爆心地から約1.2キロメートルまで入市して被曝。申請疾病は心筋梗塞です。

 原爆症の裁判は、2000年7月18日最高裁判決(松谷訴訟)や2003年からの集団訴訟や、これに続くノーモアヒバクシャ訴訟において全国各地の裁判で多数の判決が出されています。最高裁判決を含むこれら裁判では、被曝線量の科学的推計には限界があるのだから、数値を機械的に適用して判断することを戒め、被爆者の被爆状況や被爆後の健康状態等を総合的に考慮して放射線起因性を判断すべきとの判断基準が判例上確立しているのです。

 ところがTさんの一審判決は、総論ではこれまで原爆症について裁判例として積み上げられ、確立されている原爆放射線起因性についての判断基準を継承するかのような態度を示しながら、いざTさんの起因性認定についてはTさんが浴びた被ばく線量を具体的・定量的に示すことができない・・・

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