「処理水」の海洋放出は、何をもたらすか

水俣病京都訴訟弁護団事務局長 弁護士(京都) 尾藤廣喜

海洋放出決定とその手続き

 政府は、2021年4月13日に、福島第1原発事故の「処理水」を2年後に海洋放出することを決めました。

 ここでいう「処理水」とは、福島第1原発事故により、核燃料から溶け出した放射性物質を含む高濃度の汚染水を多核種除去設備(アルプス)で処理した後の水のことです。現在、汚染水は1日平均140トンも発生しているとのことであり、「処理水」は、127万トンもあるとされているところから、これをどうするかは、極めて深刻な問題です。

 この「処理水」については、①水蒸気にして大気に放出する。②地層に注入する、③海洋に放出するなどの案が検討されていましたが、政府は、2015年8月、地元をはじめ幅広い関係者に丁寧な説明をなし、関係者の理解なくして、いかなる処分も行わないと約束していました。

 ところが、今回、政府は、関係者の意見を聞くことも、丁寧な説明も、さらに地元の合意形成の努力をすることもせずに、海洋放出を決めてしまったのです。

海洋放出に問題はないのか

 今回、政府は、海洋放出を決めた理由の第1として、「処理水」には、トリチウム以外の放射性・・・

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