生活保護の“扶養照会”
─申請者の意向を尊重する運用へと大きな改善─

生活保護問題対策全国会議 弁護士(大阪) 小久保哲郎

1 生活保護利用の大きなハードルだった“扶養照会”

 生活保護の申請をすると、福祉事務所は親族に対して、「仕送り等できないか」を問う手紙を出します(これを“扶養照会”といいます)。未だ生活保護に対する偏見が根強い日本では、この扶養照会をされるのがイヤで生活保護の利用を断念する人がとても多く、生活保護利用の大きなハードルとなっています。

 一方、厚生労働省の調査(2017年8月)でも、年換算で46万件に及ぶ保護申請時の扶養照会に対して「金銭的な扶養(仕送り)が可能」と回答したのはわずか1.45%にとどまります。扶養照会は、ただでさえ忙しいケースワーカーにとっても、労多くして実りのない「壮大なムダ」なのです。

 そこで、2021年に入って、生活保護問題対策全国会議は、つくろい東京ファンド(稲葉剛代表理事)からの呼びかけに応じて共同で、「扶養照会は申請者が事前に承諾した場合に限ること」等を求める運動に取り組みました1。その結果、“満点”とは言えないものの、以下のようなかなり大きな改善があり、その内容は2021年度からの生活保護手帳別冊問答集にも掲載され・・・

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