弁護士(東京) 井橋 毅
はじめに
生活保護制度は、最低限度の水準の生活の保障を目的とするが、実際に支給された保護費が支給されるべき額に満たない場合は、最低限度の水準を下回る生活を強いられる。セーフティーネットとしての役割があるだけに、このような事態は生じてはならない。
もっとも、このような事態は実際に生じており、執筆者が関わっている事件では、誤った収入認定により過少支給が発生し、国家賠償請求訴訟にまで発展した。以下、同事件を紹介する。
第1 正確な収入認定の重要性(前提知識)
1 収入認定について
保護費は、行政が定める最低生活費から収入(給料や年金等)を控除して算定される。そのため、保護費は、収入の有無やその額に応じて個別的に確定されるのであり、この確定プロセスを「収入認定」という。
この収入認定は、被保護者による申告、行政による調査等によって判明した収入に基づいて行われるが、収入の変動が判明すれば、その都度収入認定もなされ、保護費が変更される。
2 正確な収入認定の重要性
実際の収入よりも過大に収入認定がなされた場合、最低生活費から控除される額も過大になり、保護費が本来受けられる額より少なくなる。・・・
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