新型コロナウイルス感染症流行期において高齢者が最善の医療およびケアを受けるために
─日本老年医学会の提言を中心に─

国立長寿医療研究センター在宅医療・地域医療連携推進部長(医師) 三浦久幸

1 日本老年医学会の提言の背景と趣旨

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、これまで行われてきた通常時の医療体制では、予防や治療法が明確でない急性に進行する感染症には充分に対応できない、という事実を突きつけたという意味で、医療現場全体に大変な衝撃を与えることとなった。そうはいっても世界的に見ても日本の救急医療のレベルは高く、ニューヨークではCOVID-19により人工呼吸器が装着された人の致命率が88.1%と報告されているが、国内では70代の高齢者であっても約70%以上は救命されている。もちろん、十分に救命できそうな対象を選んだ可能性は高く、単純に比較はできないが、高齢者であっても、呼吸不全においても本人・家族の希望で人工呼吸器を装着する充分な根拠となる。しかしながら、世界的にみるとイタリアのように高齢であるからという理由だけで、集中治療(ICU)を利用する制限をとった国もある。日本老年医学会ではこのような年齢によるトリアージの日本国内への導入へ危機感を感じ、「新型コロナウイルス感染症流行期において高齢者が最・・・

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