原発国賠千葉訴訟1陣東京高裁判決を勝利して
─国の責任に関する司法判断を分けたもの─

原発被害救済千葉県弁護団事務局長 弁護士(千葉) 滝沢 信

1 はじめに

 10万人を超える人々が避難を余儀なくされ、10年を経た現在もその被害が続く福島第一原発放射能大量放出事故は、1986年4月のチェルノブイリ原発事故と並ぶ史上最悪の公害事件である。

 この未曽有の原発事故に対する被害賠償は、これまで、国が、交通事故損害の基準に準じて定めたいわゆる「中間指針」に基づき、東京電力ホールディングス(以下「東電」)が行って来ているものの、①その賠償額は実際に生じた原発被害の深刻性、広範性、不可逆性という前例のない損害をカバーするに足りるものなのか否か(損害論)、そして、②その未曽有の放射能事故を惹起した東電と唯一の規制機関である国の責任を問う(責任論)国家賠償裁判が、日本全国で約30を超える地方裁判所に提起され、これまで15の地方裁判所判決と三つの高等裁判所の判決が出されている。これまで、国の責任を肯定する地裁判決は8件で、これを否定するものが7件と拮抗し、高裁段階では2020年9月30日の仙台高裁(一審福島地裁)と2021年2月19日東京高裁(一審千葉地裁)が国の責任を認め、2021年1月21日・・・

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