日本学生支援機構「一括繰り上げ請求」の研究(6)

ジャーナリスト 三宅勝久

 独立行政法人日本学生支援機構が利用者に向けた文書のなかで随所で使っている「期限の利益」、その「剥奪」「喪失」という言葉に関して、前回に続いて考察する。込み入った内容を整理するために前回と重複する部分があるが、ご容赦願いたい。

 支援機構の「奨学金ローン」を借りる際に使われている書類に「[貸与奨学金]確認書兼個人信用情報の取扱いに関する同意書」(以下「確認書」)というものがある。裏面に、「確認事項」と題して細かく「条文」が記載されており、その「奨学金の返還に係る事項」という項に次の一文がある。

 〈(8)本人が債務(貸与を受けた総額、利子、延滞金及び督促手続費用)の返還を延滞し、機構から書面により期限の利益を失う旨の通知を受けてもなお延滞を解消しない場合は、債務全額について期限の利益を失い、直ちに債務全額を返還しなければなりません。〉

 この記載について、筆者は以下の三点の理由から強い違和感を覚える。

 一点めは「期限の利益」という言葉についである。「期限の利益」は民法に定義がある法律用語だが、日本学生支援機構法や同施行令など奨学金ローンに関する法令のどこを探してもこの言葉は出て・・・

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