成年年齢引下げに関する社会的な問題意識の共有に向けて
─ブックレットの発刊とシンポジウムの開催─

弁護士(島根) 遠藤郁哉

1 日弁連会長声明の公表

 日本弁護士連合会(日弁連)は、令和3年4月28日付けで、「1年後に迫る成年年齢引下げに伴う弊害防止のための実効性ある施策の実現を求める会長声明1」を公表した。

 この会長声明は、民法の成年年齢を20歳から18歳に引き下げる「民法の一部を改正する法律」(平成30年法律第59号。以下「民法改正法」という)の施行まで1年を切ったにもかかわらず、引下げの前提条件とされた諸施策2がほとんど達成されていないことを指摘した上で、改めて成年年齢引下げに伴う弊害防止のための実効性ある施策の速やかな実現を求めるものである。

 成年年齢の引下げについては、引下げの事実自体の周知は一定程度進んだものの、引下げによって生じる弊害、すなわち、18歳・19歳の若者が未成年者取消権を失うことによる消費者被害の拡大のおそれについては、十分な周知が進んでいるとは言い難い3。特に、つけ込み型不当勧誘取消権の創設の目途が立たず、実践的な消費者教育の全国的な実施が必ずしも十分でない現状においては、引下げによる影響を社会的な問題意識として共有しておく必要性が高い。

 このような観点から、日弁連・・・

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