適格消費者団体NPO法人京都消費者契約ネットワーク理事・事務局 弁護士(京都) 長野浩三
特定商取引法が定めるすべての取引類型及び預託法に関し、交付が義務づけられた概要書面及び契約書面の電子化を認める法案が、2021年3月5日、国会に提出されました。
しかし、上記法案は、以下の点で問題です。
1 特定商取引法が法定書面等の交付を義務付けた趣旨に反すること
(1)特定商取引法は、不当な勧誘が行われやすい類型につき特別な消費者保護の規定を置いています。
(2)書面交付義務の意義
特定商取引法が契約内容等を記載した書面の交付を義務づける趣旨は、契約締結前ないし締結直後に販売業者から消費者に書面を交付させ、消費者が気付いていない契約内容の不利な側面に気付く機会を与えるとともに、消費者が契約内容を冷静になって確認して考え直す機会を与え、さらには、その後も債務の履行状況について契約条項に照らして判断する手掛かりとする点にあります(契約内容の警告機能とクーリング・オフの告知機能、保存機能)。
(3)書面の電子化の問題点
ア 警告機能の低下
仮に、このような契約書面及び概要書面が電子化された場合には、高齢者をはじめとす・・・
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