第13章 生活保護・福祉

弁護士(大阪) 小久保哲郎

1 生活扶助基準引下げに基づく保護変更処分の取消しを認めた画期的な大阪地裁判決

 自身も弁護団の一員なので我田引水ではあるが、今期の生活保護をめぐる裁判で特筆すべきは、2021年2月22日に言い渡された大阪地裁判決であろう〔6〕。

 厚生労働大臣は、2013年8月から3回にわけて総額680億円、平均6.5%、最大10%に及ぶ史上最大の生活扶助基準の引下げを行った。これに対し、全国29地裁で30の訴訟団、1000人を超える原告が訴訟(いのちのとりで裁判)を提起して闘っているが、大阪地裁は、削減額の9割近くを占める「デフレ調整」について、①特異な物価上昇が起きた2008年を起点にしたこと、②生活保護利用者が買わないテレビ、ビデオ、PC等の教養娯楽耐久財の物価下落が大きく増幅されたことが「統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性」を欠き、違法と判断したのである。

 基準生活費とも言われる生活扶助基準本体の設定について裁判所が違法判断を下したのは、著名な朝日訴訟の東京地裁1960年10月19日判決以来、60年以上ぶりの快挙である。賃金と社会保障(1778号)に・・・

この記事は会員に限定されています。ログインしてください。
会員になるには「会員に申し込む」をクリックしてください。