弁護士(大阪) 高橋正人
令和2年の保険関係の裁判例を紹介する。
〔1〕車両保険金請求事件であり、争点は水没事故の故意免責である。
控訴審判決であり、原審の請求棄却を覆して車両保険金の支払いを命じている(上告受理申立、不受理決定)。
夜間に暗い抜け道を走行していた自動車が、道路脇の農業用水路に転落して全損となった事故である。
運転者の主張は、小動物が前方に飛び出してきたのに驚いてハンドルを切ったところ道路から逸脱したというものである。
保険会社は、上記主張が客観的痕跡と科学的に整合しないという主張の他、虚偽もしくは誤った説明をしたこと、保険金請求によって金銭的利益を得ることができるとの理由で故意に水没させたと主張した。
一審判決は、科学的に整合しないとの主張については真偽不明としたが、その他の事情を総合して故意免責の主張を認め請求を棄却した。
本判決は、故意免責に関する事実の立証を「科学的観点からの立証」と「非科学的観点からの立証」に分け(分類は判例時報による解説)、両者の扱いに差異を設けている。
「非科学的観点からの立証」は、そもそも水掛け論的な曖昧さを免れないが、「科学的観点からの立証」の成功によっ・・・
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