第4章 消費者契約法

消費者庁 小田典靖

第1 はじめに

 本稿においては、消費者契約法、消費者団体訴訟制度などの判決を幅広く取り上げることとするが、本稿における意見にわたる部分は、すべて筆者の私見であることを予めお断りしておく。

第2 津地方裁判所四日市支部令和2年8月31日判決〔6〕

1 事案の概要と結果

(1)本件は、歯科診療を行う医療法人における治療費の不返還条項が消費者契約法第10条により無効と判断された事案である。

 亡A(契約当時80歳を超えていた)は、平成29年8月、被告となった医療法人とインプラントの施術に関する契約(代金264万6000円)を締結したが、契約を締結した際に署名・指印した承諾書には、「※患者さんの都合により治療を中断された場合、原則として治療費の返還はいたしかねます。」(以下「本件不返還特約」という)との記載があった。

 亡Aは、平成29年11月まで被告に通院したが、その後、通院せず、平成30年9月に死亡した。

 亡Aの相続人が、被告に264万9000円の返還を求めた訴訟が本件である。

(2)裁判所は、本件不返還特約は消費者契約法第10条により無効となるとした上で、履行済みの治療は4分の1程度である・・・

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