「誰」が「脆弱な消費者」か?

菅 富美枝(法政大学経済学部教授)

 消費者法の世界において、「脆弱な消費者」という言葉が、聞かれるようになって久しい。だが、「脆弱な消費者」という言葉を用いるとき、われわれは自ずと、一定の範囲に入る人々、あるいは、一定の範疇に属する人々のみをイメージしていないだろうか。こうした姿勢は、第一に、その範囲や範疇から漏れる人々に対して支援を届けられない、という問題性を抱えている。だが、さらなる問題性は、「消費者脆弱性」を、特定の人々にのみ関わる特殊な事柄であると人々に認識(誤解)させてしまうことにある。

 つまり、「脆弱な消費者」という言葉が抱える問題性は、そう定義できる範囲や範疇の拡大(あるいは、逆に縮小)、はたまた「脆弱」という言葉に代わる語の再検討によって、解決できる事柄ではない(この点に関連して、最近偶然、とあるリマスター版のイギリスのミステリードラマを視ていて、“vulnerable”を「無抵抗の」と訳出しているのに気づいた。なかなか良い訳ではないかと思ったが)。問題の本質は、誰かを「脆弱な消費者集団」として社会の中の特別な人々として捉えようとする姿勢自体にある。なぜならば、「脆弱な状況・・・

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