不公正取引の包括的な規制
─EUにおける規律をモデルとして─

京都大学大学院法学研究科准教授 カライスコス アントニオス

1 はじめに

 日本では、消費者法における規律が後追い型のものになっていることが指摘されてきている1。同様の問題は、EUでも生じてきており、EU消費者法の「断片化」が問題視されている2。そして、これを解決するための最初の本格的な立法として採択されたのが、不公正取引方法指令2005/29/EC(以下「UCPD」ともいう)である3。本稿で紹介するように、UCPDは、不公正な取引方法を広く規制するものであり、EU消費者保護法制の中で重要な役割を果たしている。

2 不公正取引方法指令の概要

 UCPDは、域内市場の適切な機能に寄与し、高水準の消費者保護を達成することを目的として(1条)、消費者に対する事業者の(BtoC)不公正な取引方法を規制するものである4。商品に関する取引の前に、その際に、またはその後に、消費者に対して事業者が行う不公正取引方法に適用されることから(3条(1))、広範な適用範囲を有し、包括的な立法として位置づけられる。他方で、その規定が不公正取引方法の特定の側面を規制するEU法の他の準則と抵触する場合には、その側面については後・・・

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