キャッシュレス化推進の裏で進む規制緩和
─消費者保護は後退─

朝日新聞東京本社経済部記者 笠井哲也

 現金を使わない「キャッシュレス」の推進を盾に、政府が事業者側の意向を汲む形で規制緩和を進めている。キャッシュレス化で便利になることは、消費者にとってはありがたいことだが、どうも消費者保護の視点は置き去りにされているようだ。このまま邁進していいのだろうか。

キャッシュレスを推し進める政府

 政府はここ数年、キャッシュレス推進を成長戦略に掲げてきた。諸外国のキャッシュレス決済の比率が40〜60%台であると喧伝。国内では20%台にとどまっている比率を、2025年6月までに40%に、将来的には「世界最高水準」の80%をめざすという目標を立てている。世界の流れに遅れをとるまいと、事業者側が事業をしやすい環境整備に努めている。

 なかでも記憶に新しいのは、19年10月の消費増税に伴って始まった政府のポイント還元事業だろう。総事業費は予算ベースで7753億円。このうち、中小店舗などが支払う決済手数料の補助には813億円、決済端末の導入費の補助に201億円をばらまいた。

 こうした政策効果もあり、19年のキャッシュレス決済比率(クレジットカードや電子マネー、QRコードの支払額を足・・・

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