欠陥住宅紛争の基礎知識(53)
─マンションの瑕疵をめぐる問題(5)─

弁護士(東京) 河合敏男

5 損害賠償請求権の単独行使

 前回、共用部分の契約不適合に基づく損害賠償請求権行使について、団体のみに限られ個々の区分所有者による権利行使が制限されるか否かについて見解が分かれることを紹介した。この請求権について団体的規制に服させる利益状況は前掲最高裁判例の事案以上に大きい。他方、各区分所有者はマンション購入時に共有持分に関する損害賠償請求権の単独行使の期待をもっているとはいえないし、団体的利益を犠牲にして細分化された損害賠償請求権を与える必要性も乏しい。個々の区分所有者による権利行使は制限されるべきであろう。

6 区分所有権が転売された場合の問題

 区分所有権の一部が転売された場合、管理者に区分所有法26条4項に基づく訴訟追行権が認められるか否かが議論されている。転売により区分所有権を取得した転得者(現区分所有者)は、転売者の分譲業者に対して有していた契約不適合による損害賠償請求権について、特にその譲渡を受けない限り当然には権利行使できない。そうすると管理者は転得者(現区分所有者)から請求の代理権の授権を受けられないことになり、管理者は原告適格を取得できないことになる・・・

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