茶のしずく石鹸事件─東京地裁判決の問題点─

茶のしずく石鹸被害救済東京弁護団 弁護士(東京) 中村忠史

 東京弁護団は、東京地裁に平成24年4月から7次の訴訟(原告169名)を提起した。第一審係属中に原告146名について和解が成立し、平成30年6月22日、東京地裁は原告23名について第一審判決を言い渡した。その内容は製造物責任法の解釈を誤り、被害者の救済について重大な問題を含んでいた。東京高裁では大阪高裁と同水準の和解が成立した。和解内容は大阪高裁での和解とほぼ同様であるので、大阪弁護団の報告に委ねる。本稿は東京地裁判決の問題点を報告し、製造物責任法の解釈・運用に注意を喚起しておきたい。なお、本稿は、東京弁護団の見解ではなく、筆者の個人的見解である。また、悠香ホールディングス株式会社は「悠香」、株式会社フェニックスは「フェニックス」、株式会社片山化学工業研究所は「片山化学」と省略する。

1 茶のしずく石鹸の使用者に小麦アレルギーが発症した理由

(1)グルパール19Sの特徴(加水分解コムギ末)

 小麦中のタンパク質であるグルテンはそのままでは分子量が高く、水に溶解しない性質を有するので、これを部分的に分解すると溶解性を向上させることができ、乳・・・

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