民法の成年年齢引下げ問題の現状と課題

弁護士(島根) 遠藤郁哉

1 はじめに

 平成30年6月13日、民法の成年年齢を20歳から18歳に引き下げることを内容とする民法の一部を改正する法律(平成30年法律第59号。以下「民法改正法」という)が成立した。同法は、令和4年4月1日に施行される予定である。以下では、成年年齢引下げの経緯とその影響について再確認した上で、1年後に迫る施行に向けて、現状と課題を整理したい。

2 成年年齢引下げの経緯

(1)成年年齢引下げの議論は、平成19年5月に成立した国民投票法(「日本国憲法の改正手続に関する法律」)が直接の端緒となった。同法は、憲法改正のための国民投票権年齢を満18歳以上と定めるとともに、その附則において、公職選挙法(選挙権年齢)と民法(成年年齢)について必要な法制上の措置を講ずるものとした。

(2)法制審議会は、平成21年10月、「民法の成年年齢の引下げについての意見1」を答申し、「成年年齢を18歳に引き下げるのが適当」と結論した。ただし、この結論には、若年者の自立を促す施策や消費者被害拡大のおそれを解決する施策が実現されること、施策の効果等が国民に浸透し、国民の意識として現れることを引下げの・・・

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