日本の民主主義運動強化のために(26)
—被害者に「テレビカメラの前に立て」と言えるか—

弁護士(大阪) 木村達也

1 はじめに

 前回は、被害の可視化・顕在化が大事だと書いた。被害の可視化・顕在化がなければ、人は怒ることも行動することもできない。今日のように社会の巨大化、複雑化、分業化、専門化、情報のネット化が進むと加害と被害、その因果関係を特定することは大変に難しくなる。加害・被害の特定には、科学的、法律的、政治・経済・社会・文化的要因が複雑に影響するからである。そういう様々な要因の中でも政治的に大きな影響を与えるものはマスコミ世論である。そして、マスコミ世論の動向を決定するものは当事者の声や被害者の訴えである。良し悪しは別にして、私達もまた、「被害者の声」「当事者の訴え」の可視化、顕在化は避けて通れないと知るべきである。

2 「当事者の声」「被害者の訴え」とは何か

 市民運動や消費者運動は、被害当事者の権利の回復や確立を求める行動である。被害者を支援する運動団体は、被害者を側面から支援し、その声がマスコミ世論、更には、立法・行政機関に聞き届けられるように援助、協力、支援している。今日、マスコミ報道を見る限り、被害者の声はあまり聞こえず、支援者や評論家の声がやたらと姦しいが、政治の・・・

この記事は会員に限定されています。ログインしてください。
会員になるには「会員に申し込む」をクリックしてください。