長崎県におけるカジノ問題の現状と課題

弁護士(長崎) 今井一成

1 現状の整理(2021年2月末日現在)

 長崎県は、テーマパーク施設ハウステンボスの隣接地にカジノ付IRを誘致しており、全国で最も早くIR設置運営事業者の公募を開始しました。そして、同年2月12日現在、五つの事業者が公募に応じました。今後は、同年3月中旬まで一次審査を実施して3事業者に絞り、本年8月ころIR設置運営事業者1社を選定することが予定されています。

 このように、長崎県は、他の府県に先駆けてIR設置運営事業者の選定作業を進めており、IR誘致に対する前のめり姿勢が見て取れます。

2 長崎IR実施方針の問題点

(1)はじめに

 IR・カジノ問題については、ギャンブル依存症の増加や治安の悪化、青少年への悪影響等、複数の弊害が指摘されています。また、事業者との長期間契約と中途解除時の違約金問題もあります。もちろん、長崎IRにおいてもこれらの弊害や問題点が懸念されるところですが、以下では、長崎IR特有の問題点について概説します。

(2)経済効果への疑念とトリック

 長崎県は、経済波及効果として年間3200億円〜4200億円、雇用創出効果として年間2.8万人〜3.6万人等、IR誘致に・・・

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