静岡大学人文社会科学部経済学科教授 鳥畑与一
はじめに
本年(2021年)10月からのIR区域整備計画の申請開始に向けて誘致自治体のIR事業者の募集選考が始まっている。しかし昨年5月に最有力視されていたラスベガス・サンズの撤退に続いてウィン・リゾーツも進出断念が伝えられている。大阪IRの唯一の候補と見なされていたMGMリゾートも申請するのか懸念が広がり、大阪府等は実施方針改訂で部分開業も認めて引き留めに躍起となっている。メルコやゲンティング等も具体的動きが見えない一方で、長崎県や和歌山県で参加を明確にしているのはカジノ事業の実績のない事業者ばかりであり、成長戦略を牽引する巨大IR投資の実現性が極めて不透明となっている。
このような日本のIRカジノ推進への逆風は、コロナ禍によるカジノ市場崩壊による大手カジノ企業の経営悪化だけではない。経済のデジタル化を背景に進んで来たカジノ(ギャンブル)のデジタル化(オンライン化)が一気に加速したことも、コロナ禍収束後のカジノ市場の長期的見通しを困難なものにし、大手カジノ企業の対日巨大投資熱を冷ます要因となっている。例えばMGMリゾーツがBetMGMなるオンラ・・・
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