第1〜3世代のカネミ油症未認定患者の臨床例

菊陽病院 精神科・神経科 医師 藤野 糺

1 はじめに

 筆者は1970年から原田正純医師の指導を受け水俣病の、2000年からはカネミ油症の診察にも従事してきた。当初、対象は油症認定患者であったが、2014年からは全国の医師・歯科医師と共に未認定の被害者の健康調査を実施して来た。

2 2014年北九州市調査

 対象には1968年10月の第一回油症検診を受けた3人を含む。重症の2名(A、B)には油症診断基準の重要な所見及び、参考となる自覚症状のほとんどが認められた(表)。またそれら以外の神経・精神、自律神経、循環器、消化器、呼吸器、腎・泌尿器、生殖器、内分泌・アレルギー、代謝疾患、骨・関節・筋肉、悪性腫瘍など全身の症状・所見が多く認められた(表)。

 A(1950年11月生、調査時(以下同)63歳、男)は、北九州市で家族ぐるみで4〜5年カネミ油使用の揚げ物を多食した。それを食べなかった姉を除いて全員の皮膚の色が黒くなり、病弱となった。17歳時(1967年11月〜68年11月)に咳と共に喉から脂肪の塊が出た。症状が出て以来、九大皮膚科のカネミ油症外来に通院していたが認定されなかった。24,5歳時に大腸癌の手・・・

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