弁護士法人の破産手続開始決定と預り口口座の信託財産性

弁護士(福岡) 黒木和彰

第1 弁護士の預り金と信託

1 問題の所在

 弁護士法27条は、弁護士は、弁護士法72条乃至74条の規定に違反する者から事件の周旋を受け、又はこれらの者に事故の名義を利用させてはならないと規定する。しかし、近時、情報通信技術の発展などを背景に、非弁行為者が、インターネット広告等を通じて顧客を広域に大量に集める手法が発展している。そして、弁護士がこれらの非弁行為者から事件の周旋を受け、時にはその実質的支配下に置かれてしまう非弁提携弁護士も増えつつあるとのことである1

 では、このような非弁提携弁護士の事務所の実態はどのようなものであろうか。「非弁提携弁護士の事務所は、多くの場合、運営や経理が非弁業者任せとなって弁護士が何も知らされていない。例えば、通常、弁護士は、債務整理事件を処理する場合、弁護士の預り金口座に依頼者や貸金業者からの入金がなされ、それを弁済代行したり依頼者に返還したりしている。しかし、非弁業者は、預り金口座から自分達の取り分や事務所経費などを直接払いもして、返還すべき預り金をしばしば費消してしまう。すると、弁護士は、依頼者に預り金を返還できなくなったり、依・・・

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