若年者のマルチ取引被害に関する法規制の強化策について

弁護士(札幌) 道尻 豊

1 若年者のトラブル増加

 マルチ取引(商品・サービスを契約して、次は自分が買い手を探し、買い手が増えるごとにマージンが入る取引形態。買い手がその販売組織の次の売り手となり、組織が拡大していくのが特徴。特定商取引法が規制する「連鎖販売取引」とは必ずしも一致しない)に関するPIO-NET(全国消費生活情報ネットワークシステム)における相談件数は、毎年1万件強が続いています。

 そして、近年は、20歳代の若年者のマルチ取引に関する相談が増加しています。PIO-NETにおける2018年度の相談件数では、商品に関するマルチ取引の相談5036件のうち20歳代は1945件(38.6%)、役務に関するマルチ取引の相談5490件のうち20歳代は2288件(41.7%)を占めています。

2 若年者のマルチ取引トラブルの特徴

 かつてのマルチ取引は、健康食品や化粧品などといった物品の販売に関するものが主流でしたが、近時は、各種の投資取引、アフィリエイト等の副業、暗号資産(仮想通貨)等の利益収受型の役務などを対象とする、いわゆる「モノなしマルチ」が増加しており、インターネットやSNSの利用も背景と・・・

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