弁護士(東京) 大森秀昭
1 判決の概要
福島第1原発から20キロから30キロ圏内の旧緊急時避難準備区域にある福島県田村市都路町の移住者、二地域居住者ら28世帯、58名の原告が不動産、家財等の賠償を求めた阿武隈会訴訟(平成26年(ワ)第5697号外)の東京地裁2020年10月9日判決は、その請求額の一部の賠償を認めた。その財産的損害の請求総額は約11億であり、判決が認容した賠償額は約6500万円であった。
2 本判決の財産的損害一般の認定理由
本判決の財産的損害の認定理由に関する要旨は以下のとおりである。
(1)財物が滅失・毀損したことに対する損害賠償額は、その時点の交換価値によって把握すべき。
(2)これとは別に、交換価値の減価分が賠償されたとしても、侵害行為がなかったとしたらあるべき財産状態が回復したものと評価できないような特段の事情が存在する場合には、交換価値の減価のみにとらわれることなく、利用利益の侵害をもって、これを賠償の対象となる損害と評価すべきである。
(3)この「特段の事情」とは、典型的には、市場価値が十分にその利用価値を包摂していないことに加え、代替性が乏しいために同等の利用が可能・・・
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