日本の民主主義運動強化のために(25)
—被害の可視化・顕在化—

弁護士(大阪) 木村達也

1 被害の可視化・顕在化

 市民運動、消費者運動の原点は、被害に対する怒りである。被害がそこにある限り、私達は被害の救済・根絶に向けて闘おうとする。それは、人間本能が持つ正義感である。私達の尊敬する甲斐道太郎先生はこれを「素朴な正義感」と呼び、先生のこれまでの行動は「素朴な正義感に基づくものであった」としばしば語られた。

 被害に対する怒り、私達のサラ金被害者の救済と法規制運動はサラ金被害に対する国民的怒りであった。その国民的怒りが貸金業者の過剰与信を縛り、高金利を抑え、違法悪質な取立てを規制する貸金業法獲得へ昇華された。

2 「サラ金被害」の可視化・顕在化はどのようにして行われたのか

 クレサラ運動が始まった今から40年前は国民生活がようやく安定し、国民の可処分所得が増加し、多くの国民は細やかな豊かさを感じ始めていた。マスコミも電化製品の普及を始め、レジャー旅行やスポーツ趣味などを広告宣伝し、消費の先取りとしての月賦販売、住宅ローンを始めとするローン、クレジットを新しい生活スタイルとして推奨していた。国民、消費者はこれらマスコミ広告や企業の宣伝活動に乗せられて、豊かさの先取・・・

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