消費者行政におけるムーンショットとバックキャスティング

前内閣府消費者委員会事務局長 弁護士(京都) 二之宮義人

1 ムーンショットとバックキャスティング

 2020年7月、内閣府の「ムーンショット型研究開発制度に係る戦略推進会議」第1回会議が開催された。「ムーンショット型研究開発制度」とは超高齢化社会や地球温暖化問題など重要な社会課題に対し、人々を魅了する野心的な目標(ムーンショット目標)を国が設定し、挑戦的な研究を推進する制度であり、そのための研究開発の戦略的な推進、関係府省や関係研究推進法人の間の効果的な連携・調整を図るのが戦略推進会議である。

 ムーンショットという用語はアポロ計画を開始するきっかけとなった「月に向けてロケットを打ち上げ、人間を月に送り無事に帰還させる」というジョン・F・ケネディ大統領の言葉が語源のようだ。

 同じような思考方法として地球温暖化問題等の環境分野でよく使われているバックキャスティングがある。将来のある時点に目標を設定しておき、そこから振り返って克服すべき課題等を考える方法である。

 将来のあるべき姿、目指すべき理想から逆算して考えるという意味で両者は似ているが、ムーンショットには壮大性・野心的といったニュアンスが強い。

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