消費者に対する送りつけ商法の法律構成を考える視点

京都産業大学法学部教授 弁護士(大阪) 坂東俊矢

1 はじめに

 ネガティブオプション(送りつけ商法)に関する相談がなくならない。国民生活センターによると、健康食品などの送りつけ商法に関する相談は年間5000件ほど寄せられていて、減少していない1。送りつけ商法の紛争解決に対応する規範としては、特定商取引法(以下、特商法)59条がある。そこには、消費者が送付された商品を受け取ってから2週間あるいはその引取りを請求してから1週間が経過した場合に、事業者は商品の返還を請求できないと規定されている(便宜的に、以下、この期間のことを保管期間と記載する)。この条文を素直に適用すれば、送りつけ商法の問題は解決できているようにも思われる。もちろん、現実には、送付された商品の受領日が不明であったり、代金引換郵便が使われ料金が支払済みであったりすることでの紛争は生ずる。しかし、相談が一向に減少しない背景には、そうした現実的課題に加え、この商法の法的構成そのものに残された課題があるようにも思われる。

2 特商法59条に残された課題

 特商法59条は、その理論的な構成を考え出すと、深みにはまる2。ただ、その焦点は、結局の・・・

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