ネガティブ・オプションに関する一考察・改正に向けた再論

金沢大学大学院法学研究科教授 尾島茂樹

1 はじめに

 注文していない商品を一方的に送りつけられ、購入しないのであれば一定期間内に購入しない旨の通知又は返送をするように求められ、そうしなければ商品を購入したものとして扱うとして購入代金を請求されることがある。これは、ネガティブ・オプション(送りつけ商法、押しつけ商法)と呼ばれる。販売業者によるこのような送付及び通知のみでは、民事法上、受領者に購入拒絶の通知や返送の義務、代金支払義務が生じないことについては異論がない。ただ、ネガティブ・オプションを規制対象とする特定商取引に関する法律59条(以下、「59条」という)の規定は不十分であり、かなり前になるが、私は、保管義務、所有権の帰趨について、立法の際の議論を紹介し、59条の理論的問題点を指摘するとともに法改正の方向を示した(以下、「前稿」という)1。その後、法改正はなされなかったところ、近時、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、マスクのネガティブ・オプションが社会問題化したこともあり、受領者が代金支払義務を負わないことの周知、及び諸外国の法制も参考にした制度的な措置を講じる必要が指摘されている・・・

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