精神科医がIR(カジノ)に反対する理由
─アクセスと自殺─

神奈川県精神神経科診療所協会会長 斎藤庸男

 2018年7月に成立したギャンブル等依存症対策基本法第1条(目的)に「この法律は、ギャンブル等依存症がギャンブル等依存症である者等及びその家族の日常生活または社会生活に支障を生じさせるものであり、多重債務、貧困、虐待、自殺、犯罪等(下線筆者)の重大な社会問題を生じさせることに鑑み」とあるようにギャンブル依存症が重大な社会問題を生じさせ、本人のみならず、家族を巻き込みつつ、不幸な結果を招くことは国も認めるところである。この基本法ができ、IR(カジノ)の話題をマスコミが取り上げることで、ギャンブル依存症が国民へ周知され、自己責任と責める、あるいは見放す風潮が徐々に改善しつつあるのは喜ばしい。しかし、この依存症の深刻なところは仮に治療を開始しても再発を繰り返し多くの時間を要すること、結果として本人が描いた人生と大きくかけ離れた人生を送らねばならなくなることである。現在のところ、ギャンブル依存症に有効な治療薬はなく、自助グループに参加し、週1回のミーティングを続けることが有用である。対策として、まず予防が重要、特に1次予防(啓発)である。少年期から繰り・・・

この記事は会員に限定されています。ログインしてください。
会員になるには「会員に申し込む」をクリックしてください。