定期購入契約における「お試し」被害の実態と問題点

弁護士(大阪) 江口文子

1 はじめに

 近年、インターネット通販における「定期購入契約」の被害が多発している。スマートフォン等の健康食品などの通信販売サイトに、実際は無料でもなく、お試し価格だけで入手することもできない商品であるのに「完全無料」「お試し100円」などと画面上に何度も強調した画面を表示し、実は一定の期間や回数の購入が義務付けられた「定期購入」契約となっており、2回目以降に多額の請求を受ける仕組みであることをわかりにくい表示にしたものが多く見受けられる。これは、購入条件の確認を怠った消費者の不注意により処理される問題なのであろうか。定期購入契約に潜む構造的な消費者被害の実態について考えたい。

2 相談現場における対応

 相談員は、定期購入契約の悪質な広告表示を見て、特定商取引法12条の誇大広告の禁止や景品表示法5条の不当な表示の禁止に違反すると指摘したり、特定商取引法14条1項2号の指摘をしたり1、契約不成立や、錯誤取消し、返品特約表示が不十分な場合には特定商取引法15条の3の主張をしたり、個々の解決を模索している。しかし、多くの事業者は定期購入が条件であることは表示していると主張し・・・

この記事は会員に限定されています。ログインしてください。
会員になるには「会員に申し込む」をクリックしてください。