新型コロナ問題から考える消費者教育

弁護士(島根) 遠藤郁哉

1 感染症の流行と消費者問題

 新型コロナウイルス感染症の流行は、我々の日常生活や経済活動を根底から揺るがす事態に至った。未知の感染症への不安が社会全体を覆い、感染拡大の予防が最優先事項に据えられ、これまでの生活スタイルは再検討を余儀なくされている。

 こうした状況下においても、消費者問題は様々な形をとって現れる。イベントや旅行、結婚式場等のキャンセル料に関する問題など、正常に成立した契約の清算を巡るトラブルが多発したほか、新型コロナウイルスに便乗した特殊詐欺や悪質商法被害が全国に広まった。事業者の問題にとどまらず、買い占めや転売など、非常時における消費者行動のあり方も議論を呼んだ。

 感染症の流行や大災害の発生等の非常時において、消費者はいかにあるべきだろうか。この問題を消費者教育の視点から考えてみたい。

2 消費者教育の目指すべき到達点─消費者市民社会

 消費者教育の推進に関する法律(消費者教育推進法)は、消費者教育を、「消費者の自立を支援するために行われる消費生活に関する教育(消費者が主体的に消費者市民社会の形成に参画することの重要性について理解及び関心を深めるための教育を・・・

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