コロナ禍に災害法制の活用を

弁護士(兵庫) 津久井 進

1 コロナ禍は「大災害」

 新型コロナウイルスの感染拡大により全世界がパンデミックに陥った。人々は思いがけない災難に惑い困窮を極め、社会は計り知れないダメージを被っている。このコロナ禍はまさに「大災害」である。そうであれば、災害法制が適用されてしかるべきだ。ところが日本ではそうなっていない。なぜだろうか。

 単純にいうと、「災害」というのは地震や台風などの自然災害を意味し、感染症の蔓延はそれとは違うということだろう。

 しかし、世界各国のコロナ対応を見渡すと、災害として捉えている国は多い。アメリカでは新型インフルエンザ対策はメインの災害対策の一つであり、今回のコロナ対応にもFEMA(アメリカ合衆国連邦緊急事態管理庁)が任務に当たっている。歴史の世界でも疫病は災害の一つだ。災害記録エッセイとして知られる「方丈記」には、地震・風害・水害・飢饉に加えて「疫癘」が登場する。実際、今回の新型コロナ対応でも、自衛隊は「災害派遣」(自衛隊法83条)として出動をしている。コロナ禍を「災害」と捉えるのがむしろ素直といえる。

 災害対策基本法にも、暴風、竜巻、地震などに加え、「その他の異常な自然・・・

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