弁護士(大阪) 吉岡康博
第1 はじめに
今回の白書で取り上げる裁判例は、原野商法における宅地建物取引士の名義貸し責任に関するもの、フランチャイズ本部による情報提供義務違反に関するもの、つけ込み型勧誘によるアクセサリーの高額販売に関するもの、占いサイト被害に関するもの、出会い系サイトに関するもの、スラップ訴訟に関するもの、弁護士殺害国賠訴訟に関するもの、滞納処分による過剰差押えの取消しが認められたもの、原発事故に関するものである。
第2 原野商法における宅地建物取引士の名義貸し責任が認められた事例
原野商法では販売業者の実体が不明であったり財産がないことから被害回復が困難な場合が少なくない。このような事案において名義貸しを行った宅地建物取引士に損害賠償責任が認められた事例を二つ紹介する。
〔1〕東京高判令和元年7月2日の事案は、不動産取引会社が遊休地の所有者に接触し、同土地の買取りを申し出るものの、単に買取りのみするのではなく、節税のためなどと称して不動産取引会社が所有する土地を売りつけ、差額として約 200万円を支払わせたという事案である(この不動産取引会社は、その後も別の土地の販売を持ちかけて・・・
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