弁護士(大阪) 小久保哲郎
1 法78条・法63条決定をめぐる争訟の増加
近時の生活保護裁判では、生活保護法78条に基づく不正受給による費用徴収決定や同法 63条に基づく払い過ぎの保護費の徴収決定をめぐる争訟が多発しているという特徴がある。
その背景には、「不正受給」とは言えず、本来、法63条に基づく決定がなされるべきなのに安易に法78条に基づく全額返還決定がなされる例や、法 63条に基づく決定であれば、本来、その世帯の自立に資する経費は柔軟に返還免除すべきであるのに、安易に全額返還決定される例が後を絶たない、という実務事情がある。
法78条債権だけでなく、法63条債権までもが、税金と同じ非免責債権化されるという法
「改正」がなされた今日、争訟を通じて、安易な法78条決定や法63条に基づく全額返還決定を争う必要性は高い。裁判例の蓄積を通じて適切な判断基準が確立していくことが望まれる。
判例〔4〕は、法 78条について、「被保護者の収入未申告等の行為が生活保護制度の悪用と評価できる行為にあたる場合にのみ適用すべき」とその適用範囲を限定した点で意義が大きい。
判例〔3〕は、離婚後、外国に居住する元妻やその子ら・・・
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