第12章 電子商取引
─ネットの書き込み者の責任を正しく追及するために ─

弁護士(滋賀) 土井裕明

 2020年5月、テレビ番組の出演者の自殺が報道された。 SNS上での誹謗中傷が原因といわれている。

 SNSや掲示板では、匿名や偽名で書き込みが行われる。そのため、感情をそのままぶつけるような攻撃的な表現が多くなる。いわゆる炎上状態になった場合はもちろん、そこまでいかなくても、匿名の投稿者から悪く書かれることは、精神的な負担となる。

 こうした書き込みは、侮辱罪、脅迫罪、名誉棄損罪、業務妨害罪などに該当する場合がある。しかし、警察に被害届を出したり、告訴をしたりしても、すべてが刑事事件として立件されるわけではない。

 書き込みをした加害者に対して、慰謝料などの損害賠償請求をしたり、書き込みの削除を求めたりすることも考えられる。こちらは民事の問題である。けれども、相手は匿名や偽名なので、誰を相手にしたらよいかがそもそもわからない。書き込みをした人物の責任を民事で追及するためには、その人物を特定することから始めなければならない。

 パソコンやスマホには、一つ一つにIPアドレスが割り当てられている。書き込みをした者、すなわち「発信者」を特定するには、このIPアドレスが手掛かりになる。技・・・

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