弁護士(大阪) 高橋正人
平成31年(令和元年)の保険関係の裁判例を紹介する。
〔1〕家屋の火災保険請求に対して、保険会社は故意免責及び予備的に約定保険価格が保険価格を著しく超えるとの主張を行った。
故意免責主張の根拠は、施錠中の建物の内部からの出火であること、原告会社の代表取締役に経済的な問題があること、当該代表取締役に多数の保険金請求歴があることであった。
判決は、施錠中の建物の内部からの出火であることは鍵を所持する者の放火であるとする根拠にはならず、現場へは自動車で行った前提で議論がなされているが、代表取締役が当時運転免許取消中であったことを考えるとさらに消極的に解されること、経済的な問題も必ずしも切迫しておらず、それのみで代表取締役による放火であると認定できないとした。
また、約定保険価格が保険価格を著しく超える(保険法 18条2項ただし書)との点は、約款上、約定保険価格と再調達価格と残存物片付け費用の合計額の比較で判断することになるが、保険法の趣旨より、単に金額が上回っているだけでは足りず、公序良俗に反する程度に極端に上回る場合を指すと判断された。
そして、建物保険金額(約定保険価格)が 3・・・
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