民事裁判のIT化と「特別な訴訟手続」創設の動き

弁護士(大阪) 国府泰道

1 はじめに

 法務省から研究委託されていた「民事裁判手続等IT化研究会」が2019年12月に報告書を取りまとめ、法務省に提出しました。その中で「特別な訴訟手続」が提案されています。

 この制度は、主張(書面は原則3通)と証拠(即時調べられるものだけ)を制限して、6か月で審理を終えるという特殊な訴訟制度です。この手続きによる判決に対して異議を述べますと、結審前の状態になり、通常訴訟の手続きになるとされています。ただ、その後の手続きも、判決を書いた同じ裁判官が行いますので、どれだけ審理が追加され、実質的な再審理になるのかは疑問です。

 このようにIT化とはなんら関連しない制度が提案されているのです。その提案の趣旨は、このような簡易な制度を創設することにより裁判の迅速化を図ろうというものです。

2 立法事実がないこと

 しかし、現行でも、簡単な事件は短期間で終わっており、ことさらこのような制度を新設する理由(立法事実)はありません。この制度を提案してきた最高裁は、この手続きがなじむ訴訟として、次の三つの例を紹介して
います。
① 企業間の争いで、事前に交渉があり、証拠も十分あり、争点が明・・・

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