学者の目は加盟店契約の実態をみているか?

神奈川大学名誉教授 石川正美

1 複合契約論に対する素朴な疑問

 大村敦志教授は、「複合契約」について、「より複雑な形態として、三当事者間(あるいはそれ以上の当事者の間)の契約によって形作られる複合契約が存在する。X・Y間で締結された契約(A)とX・Z間で締結された契約(B)とによって全体としての取引の仕組みが成り立っているという場合である」と説明している(同『消費者法〔初版〕』(1998年)191頁。25年後に刊行された大澤彩『消費者法〔初版〕』(2023年)194頁もほぼ同じ説明をしている)。

 しかしながら、大村教授が三当事者間の契約の例としているローン提携販売(前掲192頁)については、売主・銀行間、売主・買主間、買主・銀行間の三つの契約の実質に関する議論があった(竹内昭夫『消費者信用法の理論』(1995年)237頁参照)ことからすれば、いま一つの契約がY・Z間に存在することも指摘すべきであろう。実際問題としても、加盟店契約書に、一定の場合に、あっせん業者が加盟店に対して立替払金の返還を請求することができる旨の条項が置かれているか否か等は、極めて重要な問題である。

2 消費者信用研究者の重

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