北海学園大学法学部教授 内山敏和
Ⅰ はじめに
現代社会を特徴づける言葉が枚挙にいとまがないが、その一つに「孤立」「孤独」が挙げられる。ただ、人間は元来共同体の中で生きてきた動物であり、孤立・孤独に耐えられるようにはできていない。その歪みから生まれる社会問題が「依存」という言葉を中心とした問題系である。以下では、このような問題を整理し、現在の規制の状況を確認したうえで(Ⅱ)、法律行為の取消原因としての「状況の濫用」(あるいは「つけ込み型不当勧誘」)という考え方が持つ有効性とその課題についてみていく(Ⅲ)。ただし、紙幅の制限を言い訳に厳密な検討から逃げたうえでの極めて雑駁な感想となっていることをご容赦いただきたい。
Ⅱ 問題状況と現在の規制
1 依存問題の諸相
社会的な依存問題一般について、ここで一定の見通しを提示する余裕はないので、さっそく近時生じた個別の問題をいくつか見ていこう。
まずは、宗教団体、具体的にはカルトと呼ばれる種類の団体への過剰献金問題がある。実際の問題は、いわゆる統一教会による巨額献金の誘導とそれによる信者家族の生活崩壊であり、さらにはいわゆる宗教2世の問題として取り上げられた。・・・
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