諸外国における売買契約上の契約適合性の規律(2)
─動産売買契約における消費者保護規定を中心に─

弁護士(大阪) 大上修一郎
弁護士(大阪) 薬袋真司
龍谷大学教授 カライスコス アントニオス

 前稿(本誌144号)に続けて、売買契約における目的物の契約不適合性に関する諸外国の法制度の紹介を進める。

3 EU

(1)消費用動産売買指令(1999/44/EC)

 消費用動産売買指令(「CSGD」という)は、多数の加盟国からなるEUにおいて、動産売買に関する各国の規律が大きく異なると、消費者に混乱が生じ、また販売者間の競争を阻害する結果となり得ることから(前文第3項)、最低水準の規律を確定することにより、統一された最低限度の消費者保護を図ることを目的とする(1条)。CSGDは、最低限度の基準を設けたものであり(下限平準化)、各国においてより高い水準の消費者保護規定を設けることができる(8条)。

 消費用動産売買において、売主は消費者に対し、契約内容に適合した動産を給付する義務を負う(2条1項)。その上で、①契約締結時に売主に通知し、売主が了承した消費者の目的に合致している場合、②同種の動産に通常求められる目的に合致している場合などには、契約適合性の存在が推定される(同2項)。

 売主は、動産の引渡時に存在した不・・・

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