先住民族の権利
知られていない北海道の侵略

弁護士(旭川) 市川守弘

1 多くの日本人は、北海道が明治政府による初めての海外侵略であったことを知らない。当然のように日本の領土だと思っているに違いない。しかし、実際は明治政府が侵略した植民地第1号が北海道なのである。今日はこのことを書きたいと思う。

2 江戸時代北海道は蝦夷が島と呼ばれ、松前周辺のほんの一部が和人地として松前藩の領土だった。蝦夷が島の残りの多くの土地は蝦夷地と呼ばれアイヌが支配する土地だった。徳川家康は松前藩に対し、アイヌとの独占的交易権を付与し、「蝦夷のことは蝦夷次第」とした。この蝦夷次第というのは、蝦夷地は「化外の地」(異域)であり、そこに住むアイヌは「化外の民」という意味で、幕藩制国家の支配外の土地と民であることを意味する。したがって、鎖国政策は蝦夷地には当てはまらず、アイヌは対和人では松前藩に限定されていたものの、中国、ロシアとは交易をしていた。また課税などもなく人別帳も作成されていない。

3 蝦夷地ではアイヌは各地にコタンと呼ばれる集団を作り、コタンコロクルという長の統制下のもと、特定の支配領域(イヲル)を有して土地や自然資源を独占的・排他的に所有、占有、使用していた・・・

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